いい意味で生活感のあるインテリアは、
その人らしさが表れた良い空間だな、と思います。
私が癒されるなあと思うのは、
実はぐりとぐらシリーズにでてくるおうち。

引用:ぐりとぐらのえんそく 福音館書店
https://www.fukuinkan.co.jp/book?id=454
遠足にでかけたぐりとぐらが、のはらで毛糸を見つけて、
丸めながら追いかけていくと、くまのうちにたどり着きます。
その家では扉が開きっぱなしになっていて、
「だいじ」と書いてある保存容器が見えていたり(笑)
椅子の傍に、読みかけの新聞が落ちていたり、
掃除を終えて、たてかけた箒の床に、
かごから転がった玉ねぎがそのままになっていたりします。
床や窓辺に鉢植えの緑が置いてあります。
ここに誰かが住んでいて、
さっきまで朝食を食べながら新聞読んでいたのかな、、
なんてことが伝わってくるんです。

引用:ぐりとぐらのえんそく 福音館書店
https://www.fukuinkan.co.jp/book?id=454
暮らしをしていくうえでは、みな出したりしまったり、移動したりします。
その度に、塵一つないように綺麗に保つなんてことをしていては、
いくら整っていても、くつろぐはずの我が家が、
ストレスの原因になってしまいそうです。
私は前職、あるラグジュアリーなイタリア家具ブランドに勤めていました。
あのソファ一の包み込むような、
それでいてしっかり支えられるような最上の掛け心地は、
なかなか忘れることができません。
さらに他の家具と組み合わせることで、
思いもしないような空間の使い方が広がる、
本当に素晴らしいブランドでした。
ただ、時おり疑問に思ったのは、
あまり生活感を出すことになじまないブランドだったので、
お客様が少々大変そうにお見受けすることでした。
お子様やペットに非常に気を遣わなくてはならないし、
素材もとても取り扱いがデリケートなものが多かったのです。
重量も非常に重たく、移動の際は配送員を呼ばなければならないくらいでした。
そんなわけで、そののちにお客様宅を訪問すると、
美しい大理石天板に透明なカバーが掛けられたり、
ソファにもカバーがされたり、といったことが多くありました。
完成された世界観をもった素晴らしいブランドでしたが、
その良さを味わうためには、世界観そのままを再現することが最善と思われ、
外に出てしまう生活感はその良さを隠してしまうように感じました。
今の私は、そうではなく、
背筋をのばさないで、自分らしく過ごせる空間を
自身の色を加えながらつくっていただけるようなご提案をしています。
ガチガチに決め込むのではなく、余白を残しておく。
お客様が、私が提案したその先に、
ご自身から生まれる、「こうしたい」を実践できる空間にすること。
インテリアは、季節でも、日々でも、そのときの気持ちで変えていく楽しみがあり、
ご自身が育てていくものです。
雑然と散らかすということではなく、
日々の、そこに置かれた読みかけの本や、飲みかけのコーヒーカップが
自然な風景として馴染んで、いつも安心できる、昨日とは少し表情が変わる部屋。
今日の気分でラグを変えてみたり、照明を変えてみたり、
別のグリーンを飾ってみたり。
ご提案後は、そんな楽しめる空間をつくってもらえたらと思っています。